この記事は約17分で読めます。
「先月までは問い合わせが鳴り止まなかったのに、今月に入ってパタリと止まってしまった……」
「来月の売上見込みが立たず、夜も眠れない」
営業職や経営者であれば、一度はこのような不安を感じたことがあるのではないでしょうか。しかし、売上の波を「運」や「景気」のせいだけにしてはいけません。ビジネスには明確な「季節性(シーズナリティ)」が存在するからです。
一年を通して一定のペースで売れる商品やサービスは稀です。どの業界にも必ず「繁忙期」と「閑散期」があり、その波を正確に把握することが安定した売上を作る鍵となります。
今回は、業界ごとの繁忙期・閑散期の傾向と、それぞれの時期に打つべき具体的な営業戦略について解説します。
「繁忙期」「閑散期」とは?なぜ発生するのか
そもそも、なぜ日本企業には極端な繁忙期と閑散期が存在するのでしょうか。その背景には、日本の商習慣と気候的要因が深く関わっています。
「3月決算」で繁忙期になるのはなぜ?
日本の企業の約20%(上場企業では約70%以上)が、3月を決算月としています。これが、日本全体を巻き込む巨大な繁忙期を生み出す最大の要因です。
企業活動において、決算月には以下の2つの力学が働きます。
「今期中に確保した予算を使い切らなければ、来期の予算が削られてしまう」という心理が働きます。そのため、備品購入、広告費の投下、ITツールの導入など、余った予算を消化するための発注が3月に集中します。
営業部門であれば、「今期の売上目標」を達成するための最後の追い込みをかけます。また、購買部門や管理部門も「今期中に契約を完了させること」をKPIとしている場合が多く、意思決定のスピードが格段に上がります。
つまり、3月(および半期決算の9月)は、企業全体が「お金を使う理由」と「契約を急ぐ理由」を同時に持っている特異な時期なのです。
関連記事はこちら
閑散期の「ニッパチ現象」とは?
一方で、日本のビジネス界には古くから「ニッパチ(2月・8月)」と呼ばれるジンクスがあります。これは、2月と8月に売上が落ち込む現象を指します。
1年で最も寒く、客足が鈍りやすい時期です。加えて、他の月よりも日数が少ない(28日または29日)ため、稼働日が減り、単純に売上総額が下がりやすくなります。また、年末年始や1月のセールでお金を使いすぎた消費者が財布の紐を締める時期でもあります。
猛暑により外出を控える傾向があるほか、お盆休みで企業の稼働日が減少します。決算対策も終わり、次の半期に向けた準備期間となるため、大きな投資判断が先送りされやすい時期です。
この「ニッパチ」は、主にBtoC(飲食・小売)で顕著ですが、その影響を受けてBtoB企業の活動も停滞するため、日本経済全体の閑散期となりやすいのです。
【業界別】繁忙期・閑散期の傾向カレンダー
営業戦略を立てる上で最も重要なのは、「ターゲット顧客の業界カレンダー」を把握することです。相手がいつ忙しく、いつ暇なのかを知らなければ、適切なアプローチはできません。主要な3つの業界区分で見ていきましょう。
1. BtoB業界(IT・広告・コンサル・人材など)
企業を相手にするこの業界は、顧客企業の「決算」と「人事異動」に大きく左右されます。
2. 飲食・小売・サービス業
消費者の動き(イベント・気候)にダイレクトに影響を受けます。
3. 建設・不動産業界
気候条件と、人の移動(引越し)シーズンが鍵を握ります。
「繁忙期」は新規開拓営業のチャンス
「相手は忙しいのだから、営業をかけたら迷惑だろう」
そう考えて、繁忙期に営業活動を控えてしまうかもしれませんが、これは大きな間違いです。
コンサルタントの視点から言えば、繁忙期こそ新規開拓の最大のチャンスです。その理由は以下の3点です。
「今すぐ欲しい」というニーズが顕在化している
繁忙期の企業は、課題に直面しています。「人手が足りない」「在庫がない」「納期に間に合わない」といった切実な悩みを抱えています。そこに「即納できます」「すぐに手伝えます」という提案ができれば、細かい比較検討を飛ばして、即契約に至るケースが多々あります。
予算の紐が緩んでいる
決算期であれば予算消化、繁忙期であれば「機会損失を防ぐための投資」に対して、心理的ハードルが下がっています。普段なら「高い」と言われる提案も、「この忙しさを乗り切れるなら安いものだ」と判断されやすくなります。
担当者と繋がりやすい
逆説的ですが、繁忙期の担当者はオフィスに残業で残っていたり、休日出勤していたりする確率が高いです。普段は捕まらないキーマンと接触できるチャンスでもあります。
繁忙期の営業戦略:スピードと簡潔さ
繁忙期の営業で重要なのは、「相手の時間を奪わないこと」と「即効性」です。
長々とした会社説明や、導入に数ヶ月かかる提案は嫌われます。「御社の今の繁忙期を、弊社の〇〇でこれだけ楽にできます。来週から使えます」という、相手の目の前の火を消すようなアプローチを心がけましょう。
「閑散期」は設備投資・人材ニーズが高まる
では、売上が落ち込む閑散期には何をすべきでしょうか。テレアポを増やして無理やり売ろうとしても、相手にもニーズがないため、疲弊するだけです。
閑散期には、「次の繁忙期に向けた準備」の提案が刺さります。
業務改善・設備投資の検討
忙しい時期には、不便なシステムや古い設備を使っていても「今は変えている時間がない」と我慢して使い続けます。しかし、閑散期に入ると「次のピークまでには、あの非効率な業務をなんとかしたい」と考え始めます。
じっくりと時間をかけて比較検討が必要な、ITシステムの導入、オフィスの移転、大型設備の入れ替えなどは、この時期に商談が進みます。
人材教育・採用活動
現場が落ち着いている閑散期は、社員研修やマニュアル作成、そして次の繁忙期に向けた採用活動を行う絶好のタイミングです。
既存顧客との関係構築
時間に余裕があるため、担当者も雑談や情報交換に応じてくれやすくなります。売り込みではなく、「前期の繁忙期はどうでしたか?」「次はどのような課題がありそうですか?」といったヒアリングに徹することで、信頼関係( ラポール )を深めることができます。
閑散期の営業戦略:コンサルティングと種まき
閑散期の営業は、「課題解決型の提案(ソリューション営業)」が有効です。
「今のうちに業務フローを見直しませんか?」「来期に向けて、今のうちに種まきをしましょう」といった、中長期的な視点での提案を行います。ここで丁寧に種をまいておくことで、次の繁忙期が来た際に「あ、そういえばあの時提案してくれた会社に頼もう」と第一想起を獲得できるのです。
業界の波を予測した営業戦略を:まとめ
ビジネスにおいて、繁忙期と閑散期はコインの裏表です。どちらが良い・悪いではなく、それぞれの時期に適した「戦い方」があります。
最後に、これまでの内容を営業アクションとして整理します。
次期戦略を練っている経営企画、現場改善をしたいマネージャー。
「業務効率化」「コスト削減」「人材育成」「リニューアル」。
じっくりヒアリング。信頼構築。中長期の計画提案。
「次の波に乗る準備を一緒に整える」という意識。
優秀な営業や経営者は、カレンダーを見て「今は攻める時か、耕す時か」を常に判断しています。
もし、あなたの会社が「閑散期で売上がない」と嘆いているなら、それは提案内容が「繁忙期向け」のままになっているからかもしれません。逆に、「繁忙期なのに競合に負ける」なら、スピード感や即効性の訴求が足りないのかもしれません。
まずは、自社のターゲット顧客のカレンダーを広げてください。そして、その月にお客様がどんな心理状態で、どんな課題を抱えているかを想像することから始めましょう。季節の波を読み解き、先回りして待ち構えることができれば、どのような時期であってもビジネスチャンスを逃すことはなくなるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. 「3月決算」で繁忙期になるのはなぜですか?
企業活動において「来期の予算確保のための予算消化(駆け込み需要)」と「今期の売上目標達成のためのラストスパート」という2つの力学が同時に働くため、3月は巨大な繁忙期となります。
Q. 閑散期の「ニッパチ現象」とは何ですか?
2月は寒さと日数不足(稼働日の減少)、8月は猛暑とお盆休みによる稼働低下が主な要因です。BtoCだけでなくBtoB企業も影響を受け、経済全体の活動が停滞しやすい時期と言われています。
Q. 閑散期に有効な営業戦略はありますか?
忙しい時期には後回しにされがちな「業務フローの見直し」「ITシステムの導入」「人材教育」など、次の繁忙期に向けた準備となる提案を行うことで、将来の受注につなげることができます。
企業リスト無料ダウンロード
質の高い営業リストを最短30秒で作成!
「企業情報DB byGMO」は、「製造業の中小企業リスト」「IT企業一覧」などの条件を選ぶだけで、ニーズにマッチした企業を抽出できる営業リスト作成ツールです。
毎月300件 無料ダウンロード!
有料プランへ切り替えない限り、料金請求はございません。
まずは無料でお試しください。







